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幕末の天才少年剣士・沖田総司の生涯を追う『アサギロ~浅葱狼~』【漫画レビュー】

今回は沖田総司を中心に幕末を描く『アサギロ~浅葱狼~』です。

幕末の時代。
新選組一番隊隊長の沖田総司が、まだ12歳だった頃から物語は始まります。
当時の幼名は惣次郎(そうじろう)。
無邪気な性格なのに、剣術では既に大人を負かすほどの才覚を発揮していました。
その噂は奥州白河藩のお殿様にも届いていて、ある日、惣次郎は御前試合に呼ばれます。
そして、それが彼の類稀なる剣士としての人生の幕開けとなっていきます。

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若干12歳にして阿部家指南番を敗る

天然理心流という実戦向きの流派のためか、それとも天性に武士の魂が宿っているのか、惣次郎の小さな身体から発せられる殺気は本物でした。
試合相手である阿部家指南番の剣豪・村上は、惣次郎を子供と侮っていましたが、その鋭い立ち回りに本気の太刀筋を引き出されます。
しかし、それをもってしても惣次郎には届かず、勝負は村上の敗北に終わります。

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名刀と引き換えに人の首を斬る

見事勝ちを得た惣次郎ですが、一方の村上は、阿部家指南番の身でありながら少年に敗れたという失態の責任を取り、切腹をすることになりました。
そして村上は、自分を負かした惣次郎に天賦の才を確信して、自らの介錯人を依頼します。
惣次郎は村上から譲り受けた名刀を使い、大人でも難しい介錯を音もなく一振りで決めてみせました。
しかし、あろうことか惣次郎は村上が自ら腹を切る前に首を切ってしまったのです。
介錯という神聖な儀式の手順を違えたことで、惣次郎は罪人として投獄されてしまいます。

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天然理心流の若先生

惣次郎が通う試衛館道場の師範代・島崎勝太は、惣次郎が囚われている江戸屋敷に呼ばれます。
勝太は後の新選組局長・近藤勇です。
勝太はそこで惣次郎をも上回るという剣の腕を認められましたが、大胆不敵な進言によってお殿様の怒りを買ってしまいます。
しかし、彼の大きな掛け声が獄中まで響き、瀕死だった惣次郎を起き上がらせました。
権力者に楯突く度胸と力を兼ね備えた豪快なその性格は、まさに粋ですね。

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幕末で剣と共に生きる武士の姿

剣を握れば大人顔負けの剣豪と化しても、普段はどこか抜けていて、歳相応の振る舞いを見せる惣次郎。
12歳にして名刀に魅せられ、介錯や投獄などの壮絶な経験をしながら、惣次郎はやがて歴史に名を残す武士として成長していきます。
天才剣士と呼ばれた沖田総司に焦点を当てながら、幕末の情勢や当時の人々の価値観、そして剣と共に生きる武士の魂を知ることができる作品です。

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